2016-01-30 10:00 | カテゴリ:勉強や投資情報
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

専業になった訳ですから、敵を知らなければいけません。
最大の敵は東証の取引の50%を占めるHFTのアルゴ取引です。

そのために、勉強しようと思い、以下の本を買いました。

ウォール街の物理学者
ザ・クオンツ
ウォール街のアルゴリズム戦争
世紀の空売り
 ※これは今後世界経済リセッションなら役立つかなと思って

※HFTの仕組み等については既に『フラッシュボーイズ』を読んで、以下のブログにまとめています。
フラッシュボーイズ

まず読み始めたのは『ウォール街の物理学者』です。

最初にこの本を選んだのは、これからアルゴリズムやクオンツの事を勉強するに辺り、歴史や、概論や予備知識が得られると考えたからです。

まずは歴史を紐解きながら、大きな枠組み(=概論)を知る事で、詳細、具体的な事を勉強する際の理解の深さに繋がります。

また塩漬けマンは大学で卒論を書くときに、指導教授から以下のように言われました。
「まず研究するテーマに関する全ての過去の論文を読みなさい」
「研究とは即ち、9割は過去論研究である」
「過去の偉人に学びなさい」

そういう教えを受けていたので、アルゴリズムやクオンツがどのようにして誕生したのか、数学者や物理学者がどのようにして投資に関わり始めたのか、またどのようにその学問が進化していったのか、最初に知る事が大事と考えたのです。

勿論、数学者や物理学者が投資に関わり始めた頃からの全ての学術論文を読むなんて出来るはずない(英語も出来ないですし)ので、それらがまとめられている本を探しました。

果たしてこの本は上記について最適な本でした。
クオンツの始まりから現在に至るまでの進歩の道のりを丁寧に解説してくれていました。

第一章 パリの孤独な天才
世界で初めて、投資を数学で考察した、1800年代後半の無名の数学者ルイ・バシュリエについて生い立ちから、研究成果、内容(株価は正規分布となる、市場はランダムウォークで動く等)まで記載されています。
あまりにも時代の先を行き過ぎていたため、誰も理解する事が出来ず、また数学や物理学を投資に利用するのがタブーな時代だっため、その論文は評価されることなく、歴史に埋もれた天才数学者でした。

第二章 鮭の泳ぎと株価のゆらぎ
世界で初めて自動投資プログラム(アルゴリズムの先駆け)を設計した物理学者オズボーンについて生い立ちから研究成果、内容(バシュリエの説を進化させ、株価が正規分布になるのではなく、収益率が正規分布になる(株価は対数正規分布になる)とした。また物理学の伝統的な統計手法で株式市場をモデル化可能とした)まで記載されています。
しかしながら、彼の物理学を投資に応用した研究は、「投資は儲からない」という結論しかもたらさず、皮肉にも儲かる自動投資プログラムは彼の研究成果(高度な数理モデル)からもたらされた物ではなく、投資家の行動を観察し、心理を読み取った結果から生まれたのであった。

第三章 海岸線の長さはどれぐらい?
熱狂的なブームとなった『フラクタル幾何学』の大成者であり、物理学者として栄光を掴んだマンデルプロについて、生い立ちから研究成果、内容(バシュリエ、オズボーンが唱えた、ランダムウォーク仮説、正規分布等によるシンプルなモデルは、例外的な価格の値動きでは正しく説明出来ないとし、例外が起こる市場でも通用する、複雑なモデル(レヴィ安定分布等)を使うべきである等)まで記載されています。
彼の提唱した複雑なモデルは、既にバシュリエ、オズボーンの説が基盤となって研究が進められていた金融工学の世界では受け入れられず、バシュリエ同様、時代の先を行き過ぎていたために、無視(に近い扱い)を受けるも、その後時間を掛けて浸透・研究されていった。

第四章 ディーラーをやっつけろ!
バシュリエ、オズボーン、マンデルプロ等、投資に物理学や数学を取り入れた研究は進められるも、それはあくまで学問の話であり、実際にそれで金儲けをする事は出来なかったし、彼らはしなかったが、ついに、それらを利用して投資で金儲けをする人物が現れた!
初めての現代的なヘッジファンドを作った数学者エド・ソープである。
彼はまずカジノで、ブラックジャック、ルーレットを数学を利用して攻略。
それまで絶対にディーラー(カジノ側)が勝っていたブラックジャックの攻略法(カードカウンティング)を編み出し、ブラックジャックのルールを変更させる程のインパクトを与え、ルーレットは小型コンピュータで玉が落ちる位置を予測する方法で攻略。
次に彼が挑戦したのが株式市場だった。
彼はワラントを買うために、マンデルプロ等の研究に則って、適正価格を計算した所、売られているワラントは全て適正価格より高い事が判明した。
つまり、ワラントを買えば必ず損をする・・・それなら売ればいい。空売りである。
しかし空売りのリスクは無限大。それをヘッジするために、現物の株を同時に買う手法・・・後に「デルタヘッジ」と呼ばれる手法を確立し、45年間、年平均20%以上の利益を出し続ける事に成功する。
そしてその内容を本にしたが、これまた時代の先を行き過ぎていて、誰も理解出来ずにウォール街では無視された・・・一人を除いて・・・リーガンというブローカーはソープに目を付け、ヘッジファンドを共同経営しようと持ちかける。
勿論すぐに成功した。ある時、資産家から、ソープが自分の資産を預けるに足る能力を持っているか判断するために、知り合いの元ファンドマネージャー(引退して会社経営しようとしていた)の面接を受けてほしいと言われる。
ソープはその元ファンドマネージャと会って話すやいなや、意気投合して、お墨付きを与えられる。
ソープもまた、その元ファンドマネージャを評価してこう言ったという「あの男は将来大成功するよ」。
その元ファンドマネージャこそ、有名になる前のウォーレン・バフェットであった。
しかし、栄光は長く続かず、デルタヘッジのために行っていた手法が脱税の疑いがあると当局から捜査され、あえなく、ソープのヘッジファンドは閉じられる事となった。
しかしソープの成功により、その後、何百というクオンツ系ヘッジファンドが誕生する事になる。

第五章 物理学がウォール街にやってきた
盟友シェールズと共に、オプション価格を決定するモデル『ブラック・シェールズモデル』を作ったブラックについて述べられている。
ちょうどその頃、アメリカで初めてオプションの公開市場が解禁される事が決まった事が、ブラック、シェールズに幸運をもたらした。
オプション取引は解禁されるや否や、たちまち人気となり、『ブラック・シェールズモデル』はオプション取引ではなくなてはならない物となり、彼らは時の人となった。
また、ブラックは株式とオプション取引を組み合わせた、損をしないリスクフリーのヘッジ戦略である、ダイナミック・ヘッジを開発(ソープのデルタヘッジに似ているが、内容は異なり、また、利益を出すよりも、損をしない事に重点がおかれている)する。
金融界での名声を手に学問の世界に戻ったブラックだったが、シカゴ学派とケインズ学派が対立する学会で、研究が認められず、ゴールドマンサックスのクオンツ戦略グループの統括者にヘッドハンティングされる形でウォール街に戻ってきた。
折しも当時は世の中に優秀な物理学者が職を得られず有り余っていた。
※宇宙開発でロシアに先行されたアメリカは国策で物理学を奨励していたが、アポロ計画の成功と共に、物理学優遇は終了し、大量に生まれた物理学者はろくな仕事につけないでいたため
彼らはブラックの活躍を見て、ウォール街に職を求めて押し寄せた。
彼ら物理学出身者により、クオンツがウォール街を席巻し、ブラック・シェールズモデルはポートフォリオ・インシュアランスという、大きな損失を出さないヘッジ手法として、広く普及していった。
栄華を誇ったブラック・シェールズモデルであるが、ある事件をきっかけに批判の的となる。
1987年のブラックマンデー・・・
この時、ポートフォリオ・インシュアランスにより、株価下落時に損失を回避するために空売りをするようにプログラミングされていたコンピュータは、買い手がいないのに、売り注文を出し続けた・・・結果起こったのがブラックマンデーであると言われ、諸悪の根源として、ブラック・シェールズモデルは糾弾された。
これはブラック・シェールズモデルが例外をあまり考慮しない、バシュリエ、オズボーンの研究(第一章、第二章参照)を基に作られていたからである。
激しく価格が動く例外を考慮したマンデルプロのモデル(第三章参照)で作られていれば防げたのである。
事実、ブラック・シェールズモデルは激しい例外に対処出来ないと看過し、それに対応出来る修正版のブラック・シェールズモデルを独自に作っていた会社はブラックマンデーでの損害を免れている。

物理学は前提・仮説の上に理論を組み立てる学問であり、前提・仮説が間違っていたら、理論も間違っている事になる。
つまり、物理学は完璧ではなく、失敗と修正を繰り返しながら進化する学問である以上、ブラックマンデーの責任は、投資を(そんな不完全な)物理学に頼り切っていた投資家の責任が大きいのである。
↑これが多分物理学者である著者が一番言いたかった事。物理学を悪者にするな!って事を主張したかったのかと。

以後、第6章~8章、エピローグと続きます。
興味がある人は買って読んでください。
本の紹介というより、ほとんどまとめをしている感じなので、これ以上書くと、著者や出版社からクレームが来そうです(´・ω・`)しょぼーん

ちなみに第6章は↓な感じです。
今までは物理学という学問の延長線上に投資があったが、ついに、純粋に投資で儲けるために物理学を利用する者が現れた!
理論はどうでもいい!間違った理論でもいい!!金儲けという結果さえもたらせば理論・過程は問わないという考え方は、学問としての金融工学に捕らわれている人間には発想も出来ない新しいモデル『ブラックボックス・モデル』を生み出した。
このモデルは後にシタデル等のクオンツ系有名ヘッジファンドに採用され、主流となっていく。
これを生み出したのは、最新の物理学であるカオス理論や複雑系を学んだファーマーとパッカードという野心に満ちた挑戦者達であった。
彼らはソープと同じようにカジノで自らの腕を試し、そしてそれぞれカオス理論や複雑系の最新物理学を学んだ後、「金持ちを食い尽くせ」を合言葉に、ウォール街に殴りこんできた。
彼らの修めたカオス理論や複雑系の最新物理学に比べれば、ウォール街で使われていた、単純化された数理モデルの上に成り立つ金融工学は児戯に等しい物であった。
ウォール街の経済学者は、ファーマーやパッカードの話す事を、未来人の言葉のように聞き、全く理解出来なかった。
※既存の学者はバシュリエ・オズボーン以来の前提である「株価は予測出来ない」で理論を組み立てているのに、ファーマーやパッカードは「株価は予測出来る」というのだから、根本の前提が違うために言葉通じない
果たしてファーマーとパッカードのウォール街での結末やいかに?!




尚、『ザ・クオンツ』『ウォール街のアルゴリズム戦争』『世紀の空売り』についても読み終わり次第、紹介記事を書こうと思います。

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