2016-05-28 11:15 | カテゴリ:所見日記
新規上場の会社を一つづつ調べていて、農業総合研究所というのがあったので、元農家としてはほっておけないので詳しく見てみました。

要はこの会社がやっている事は、中間業者をすっ飛ばして、農家と小売りを結びつける仕事をしています。

↓既存ルート
生産者-JA(市場)-仲卸-小売店

↓農業総合研究所
生産者(生産・調整)-農業総合研究所(物流)-小売店(の産直コーナー)
※生産者は農業総合研究所の集荷場に持っていけば、スーパーまで農業総合研究所が配達してくれる

中間搾取を省く事により、4者が4者とも利益を得られる仕組みとなっています。
・生産者・・・高く売れる
・農業総合研究所・・・買い取りはしないので在庫リスク0で手数料で確実に儲ける
・小売店・・・買い取りはしないので在庫リスク0で勝手に商品が置かれて売れたら勝手に儲かる
・消費者・・・生産者の見える安心安全新鮮な野菜(?)を安く買える

これだけ見ると、日本の既存システムを壊す素晴らしい仕組みに見えるじゃないですか。
ただ、塩漬けマンが昔勤めてた農業法人でこれを利用するかと言われれば残念ながら利用しないです。
小品目多収量を目指しているの法人でしたから。

小売店の産直コーナーではける量なんてたかが知れてるので、そのために調整作業をする時間、持っていく時間を考えたら採算が取れないです。
JA出荷だと100%買取で在庫リスク0です。

一般人は想像も出来ないと思いますが、一般的な農家(小品目多収量)が作る野菜の量はハンパないです。
ミニトマトで言えば、最低でも1シーズンで反当6トン、職人級になると10トン生産します。
5反は作りますから1シーズンで50トン生産する事になります。
1個人農家でこの量ですよ。

この莫大な量を生産しているのに、わざわざ少量を産直市用に調整作業、運送なんてしてたら、採算取れないです。
小品目多収量農家が求めているのは、莫大な量を裁ける市場であり、大変な調整作業を代行してくれる調整場(JAや生産者組合が運営)であり、必然的にJAに卸す事になります。
※ですので、農業総合研究所が成功するポイントは裁ける量を増やす(=契約スーパーを増やす)です。

そうです。
ここでもう一つのポイントは調整作業です。
農業総合研究所の仕組みでは生産者が調整作業をやります。
これもネックなのです。

農業総合研究所が頑張って販路開拓して、契約スーパーの量を増やして大量に裁けるようになったら農家は農業総合研究所を使うか・・・調整作業のせいで、それやると採算取れるか微妙です。

JAや生産者組合が調整場を作っていない作物は勿論農家が調整作業までやります。
そうすると、B級品以下は採算取れなくて、捨てているような農家が多いです。
※サイズが小さいだけですら、採算が合わなくて捨てている品目もあります。
それぐらい調整作業というのは農家に取って負担です。
※逆に調整場がある作物は、規格・サイズが悪くても、採算ラインには乗ります。

塩漬けマンの知り合いの葉物野菜の農家も、調整場がないので自分で調整作業してますが、それが凄い時間が掛かるので、B級品以下、Sサイズ以下は出荷しても赤字となるため、捨てています。
※A級品とB級品の区別は消費者には判別出来ないレベルですが、JAの規格が厳しいので、守らざるをえません
※病気や害虫が流行ると1つのビニールハウスの6割ぐらいB級品以下になるので、6割ぐらい捨ててる事になり、相当気分が悪くなります
※勿論B級品は産直市に持って行ったりしてますが、確実に採算合ってないです

んで、そこに目を付けたレストランがあって、捨ててるB級品を安く売ってくれと言ってきたそうです。
喜んでその話に飛びつく・・・はずないのはここまで読んだら分かりますよね。
農家に取って大事なのは莫大な量が裁ける市場です。
たかだか一つのレストランが使うぐらいの少量をいちいち分けて収穫して、配達までしてたら採算とれないから、そんなのやるはずないって断ったそうです。
むしろ、「ただであげるから、取りに来て、勝手に好きなだけ持って帰れ」って言ってました(笑)

ただ、逆にこれを利用している賢い農家もあります。
数品目生産の農家が近くにあって、そこの農家はとにかく防除や肥料をケチりまくります。
草取りですら極力しないです。
なので経費(特に人件費)があまり掛かりません。
でもそんなのでまともな野菜が育つはずもなく、多収量なんて不可能で、出来もしょぼいです。
その圃場は病気が蔓延したり、雑草が茂っていたりで、しょぼい野菜ばかりで、周りの農家はそれを見て嘲笑しています。
しかし・・・経営的にはそれが正しいのです。
農薬代、肥料代、人件費があまり掛かりません。
そして、その農家はあまりJAに卸さず、レストランへの直販に力を入れています。
レストランはJAと違ってほぼ規格無視で、重さしか見ないそうです。
だってA級品だろうがB級品だろうがC級品だろうが、規格外ですら、切って火を通したら一緒ですから。
※A・B・Cの違いって見た目だけで味は関係ないですから。
周りの農家から「あそこはダメな農家だ」と嘲笑されながら、しっかり儲けています。
※ただし、病気の菌は2~3キロ風で飛ぶので、こういう病気を流行らせる農家は自己中で、迷惑以外の何物でもなく、真面目に防除している農家からしたら超ムカつきます。

面白かったのは、その農家がテレビの農家特番みたいなのの取材を受けていて、テレビのレポーターが、その農家の野菜を食べて、
「美味しいっ!!こんな美味しい●●食べた事ないですよ!!」
って言っていたのを見て、ひっくり返りましたよ。
「嘘つくな!あそこの野菜が美味いはずないだろ!!テレビのグルメレポーターって嘘つきばっかだな!」
って思いました。
テレビに映る所だけしっかり草取りして、良さげな野菜だけ映してました・・・

よくテレビでこだわり農家の美味しい野菜とかやってるじゃないですか・・・そういう農家ってごくごく一部ですからね。
テレビでレポーターが「美味しい!!」とか言ってる野菜も「???そうでもなくね?普通じゃね?」っていうの多いです。
多くの農家に取って味はどうでもよくて優先順位は
1.収量
2.見た目
3.病気にならない
4.害虫に強い

であって、そういう品種を栽培し、味とか気にしている農家は少ないです。
※土地が作物に合っていれば、必然的に美味しい野菜が出来たりするので、そこまでこだわる必要もなかったりします。

あるいは上記のような問題を解決している出来る農家もあります。
スーパーと直販契約しているのですが、調整作業は一切しない。コンテナにぶっこんでスーパーに配達するだけ。
しかも買取なので在庫リスクはスーパーが負う。
これは相当楽です。
勿論そんな不利な条件をスーパーがただで飲むはずないです。
作る作物の品種はスーパーの指定です。
勿論スーパーは「美味しい品種」を指定し、そういうのは大抵、病害虫に弱くて、収量が少なくて農家泣かせな品種です。
でもその農家も、そもそも多収量を目指していない農家なので、そういう品種でもいい訳です。
※勿論沢山取れればそれに越した事はないので、頑張って作りますが、職人級の人と比べて、反当で1/3も収量を上げていませんでした・・・だから3倍以上で売らないといけないって事ですけどね・・・

後、どれぐらい調整作業が大変かというと、調整場がある野菜を作っている農家で、B・C級品は産直市へ持っていく用として自分達で調整作業をしている農家があるのですが、その調整作業は毎日重労働した後、家で夜12時までやっているそうです。
はっきり言って金儲けに貪欲だから出来る技であって、同じ品目の野菜を作っている別の農家に聞いたら、「そんな大変な事出来るはずないじゃん!それだと収穫の時にA・BC・規格外で三つに分けないといけないじゃん!この凄い量収穫してるのにそんな手間かけられないし、家でまで仕事したら気が狂う。それに産直市は量がはけないから、うちはB・C級品も全部調整場へ出荷してる」って言ってました。

上記のような現場の状況を知っていれば、農業総合研究所の仕組みは最高に見えて、問題も内包していると思われますが、しかし、実は実際同じような事をJAがしている県があって、結構成功しています。

ただ、これJAだから成功しているというのもあります。
JAは農家に対して、融資から指導から至せり尽くせりで応援してくれています。
※調整場とか市場出荷は手数料取っているし、融資は利子取ってるので、あれですが、指導は無料ですからね。
そういうJAにお世話になっている農家が、作物が出来たら
「JAには卸さねぇ、農業総合研究所の方が儲かるからそっちに卸すもんね~」
って法律的には問題ないですが、常識的に考えて成り立たないですよね。

後実はこういうのはJAも結構やってますが、上記とは矛盾するのですが、JAだから成功しないという一面もあります。
JAって同じ県内でも組織ごとに独立しており全然連携してませんから、同じ県でも別のJA管内にあるスーパーには卸せなかったりします。
※一般の人はJAって一つの組織と勘違いしていますが、各地域農協ごとに、驚く程独立して連携してないですよ。
※上記の成功しているJAは例外的に県内農協同士で連携が取れているとか、一体化しているとか、そんな感じだったと思います。

ただ、JA以外にも、農業総合研究所の強力なライバルとして、実は仲卸業者が同じような事をしており、仲卸は自分達で販路も開拓しスーパーだろうがレストランチェーンだろうが食品工場だろうが、あらゆる所に売り込みますし、100%買取なので農家の在庫リスクは0で、農家まで取りに来てくれるので配達の手間もなく、しかもJAみたいに規格にうるさくないし、調整作業もしないでいい事が多いので、農業総合研究所の仕組みよりも優秀ですが、手数料的な物は勿論取られます。
※仲卸もある程度の量が確保出来る農家でないと対応してくれないが、JAのように莫大な量は勿論裁けない

等など、いろいろ問題はありますがまとめると、以下の農家に取ってはかなり需要があると思われます。
1.少量多品目生産の農家
2.こだわって(無農薬有機・美味しい等)作っている野菜を高く売りたい農家
3.JAにお世話になっていない農家


もっと具体的に言えば、産地化していない地域です。
産地化している地域(=一品目多収量生産農家が多い)は、農家とJAと時には行政までガッチリスクラムを組んで、生産方法・ブランド化・調整作業・販路開拓・販売まで一体となってやってますので、農業総合研究所とかが入り込む隙間はないです。
またもっと出来る農家がいる産地では、JA抜きで自分達で生産組合を作って、調整作業・販路開拓・販売までやっていますから、ますます農業総合研究所の入り込む隙間はないです。

産地化していない、しかもJAが金融業ばかりやってて、やる気のない、農業が中途半端な地域では農業総合研究所のような仕組みを提供してくれる業者はありがたい存在となります。

以上は投資視点で株を買う際の基礎的な業務知識ですが、短期の投機視点となると、ここまで長文を読んでいただいてあれですが、上記はどうでもよくて、需給が大事です。
想定価格1,010円での吸収金額は4.29億円となり、時価総額も20.6億円で、さらに、ほぼVCがいないです。
ただ、ロックアップはほぼ全員にかかってますが、全員1.5倍で解除です。
需給はいい方と思いますが、問題は人気化しにくい業態という事です。
所詮卸業ですからね・・・

■忙しいと申し訳ありませんが、コメント返信出来ない事があります■
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