2016-12-10 11:49 | カテゴリ:勉強や投資情報
『マーケットの魔術師』の感想です。
↓「先物と通貨」編はコチラ
『マーケットの魔術師』感想 「先物と通貨」その1
『マーケットの魔術師』感想 「先物と通貨」その2

「先物と通貨」の人達は
テクニカル VS ファンダ
の違いがあるだけで、後はみんな同じようなこと(詳しくは「その2」の最後のまとめ参照)を言っていたのですが、株式トレーダー編は面白いので、一人ずつ掘り下げていこうと思います。

■留意■
この本では以下の定義のようです
トレード・・・投機(短期・高頻度の傾向。ショートもする)。株価が上がるか下がるかに焦点
投資・・・ロングのみで株価よりも、良い株を保有する事に焦点

そしてこの本は「トレード」についての本です。
この点を留意して読まないと思い違いをしてしまいます。
投機に焦点を当てた本という事をお忘れなきよう。
■■■■

マイケル・スタインハルト

▼経歴▼
1940年 東欧系の両親の元にニューヨーク、ブルックリンで誕生
父は宝石商で博打中毒 貧しいユダヤ系家庭
子供の頃父がある株式を200株プレゼントしてくれた事で株式に興味を持つ
他の子供達は野球などをして遊ぶ中、彼は10代から証券会社に入り浸り、大人たちと一緒にティッカー・テープを眺めていた
時間があるときには、アニュアルレポートやS&Pの企業シートを読んでいた

1960年 19歳でペンシルバニア大学ウォートン校を卒業(2年飛び級)
アナリストとしてミューチャルファンドのカルヴァン・ブロックに勤務
ビジネス誌フィナンシャルワールドの記者として働き、ブローカーのローブローズ証券に転職(農機具と消費材のアナリスト)

1967年 スタインハルト・ファイン・バーコビッツを設立して独立(ヘッジファンドのパイオニア)
1987年 ブラックマンデーでは、会社の年間利益の全てをほんの数日で失う
1991年~1993年 年60%の成績を上げる(ソロスの次に儲けた人物となる)
1994年 31%の損失。また1991年の4月と5月に二年物米国財務省証券で不正な取引をしたとして罰金を払う
※「(不正取引を)してはいないが、してはいなかったその取引を二度としないと約束する」と言う
1995年 引退
2004年 知恵の木(WisdomTree)の取締役に就任し復帰

最も成功したユダヤ人の一人としてユダヤ社会に多大な寄付や慈善事業を行う。
そのためテロリストの暗殺リストにも載る。

▼成績▼
運営する投資顧問は21年間驚異的なリターン(年30%以上の収益率)と安定性(損失を出した年は2年でわずか2%以下))
30年間マーケットのいかなるベンチマークより遥かに高い平均年間利益率30%を達成
1967年に1ドルスタインハートのファンドに投資していれば1995年には481ドルになったという

▼手法▼
・長期の投資家(ファンダメンタルによる割安株投資)であると同時に短期のトレーダー
・逆張り
※投資については『投資で大事な20の教え』とほぼ一緒(ファンダによる割安株投資で逆張り)
※この人はファンダ投資の中でも、成長株投資は好みでないようで、成長株でも割高になってたらショートしちゃうっぽいです
・空売りも好む
・ベストの投資と思えば株式のみでなく債券、オプション、通貨等も取引する
・損切は自分のファンダによる根拠が崩れない限り絶対せず、ナンピンもする
※ブラックマンデーでも買い増して、その株を二年間保有した
※ニフティ・フィフティ相場のショートは多大な損切をした模様
・売買ルールはないし考えない
・チャートは一切見ないし、ブレイクも関係ない
※要するにテクニカル否定です

▼本著要点▼
「基本的には長期投資だが、売り抜ける事を期待してトレード(短期売買)する事はある。好材料が出る事を期待して買って翌日売り抜けたりね」
→アメリカでも材料株マネゲってあるのですね
「私のコンセプトは一般的な市場の見方と違う特異な洞察(ファンダメンタルズ分析)」
→『投資に必要な20の教え』に書いてあった二次的思考であり、逆張りをするということ
「トレードの世界には、その成否はさておき、格言があるが私はそれらに従った事はない。相場で金を稼ぐというのが私の姿勢ですから、危険な道へも喜んで踏み込む。私はいつも機関投資家が好み、その熱狂的な人気に支えられた株を(ファンダメンタル分析で割高を見抜いて)空売りするようにしいる」
「問題が起きたポジションを救うためのヘッジはしない。大抵ロング・ショート両方でやられて一つの問題が二つに増えるだけだ。問題のあるポジションをヘッジするポジションを持つよりも、問題のあるポジションに対処すべきだ」

→彼は自分の特異な洞察(ファンダメンタル分析)の根拠が崩れない限り、問題が起きても自分を信じてナンピンでポジションを増したり、損切せずにホールドし続けるタイプです。ですので、ニフティ・フィフティ相場では空売りして多大な含み損を抱えて、自己不信(PER40倍も80倍も差はないのではないだろうか・・・成長がこの常軌を逸したPERを正当化してしまうのではないだろうか・・・)におちいり、多大な損切もしたそうです。
「ストップロス注文は使わない。売買ルールもない。ブレイクも見ていない。そもそもチャートは使っていない。チャートを見ても何にもならない」
→彼はチャートによる株価水準とかには興味なく、ひたすら自分の特異な洞察(ファンダメンタル分析)による株価水準しか参考にしないようです
→著者はテクニカル派なのでこの答えが気に入らないらしくチャートは過去の情報を見るのに便利ではないかと食い下がるが彼は「私ぐらいよく株を見ていれば、水準、トレンド、レンジ等々感覚で分かる」と皮肉で一蹴
「トレードルール(損切りや利食いのルール)はありません。そういう事は考えません」
「ロング・ショート戦略を取るのがヘッジファンドだが、もはやその本来の意味を実践しているヘッジファンドはなくなった。またヘッジは効率が悪い。利益を得てもそれに近い損失を抱えるからだ。」

→彼はヘッジには消極的ですが、ショートで儲ける事には積極的です。ファンダ派なので安ければ買うし、高ければ売るだけということ
「成功の事例に決まったパターンはない。2、3銘柄でうまくいった数年間もあれば、市場の流れにうまく乗った数年間もある。債権で稼いだ時期もある。決まったパターンはないという事実にこそメッセージがある。成功のための方法を定式化できると思ったら大間違い。すぐに変わるから。一時期うまくいっても、その後避けがたい大きな失敗が待ち受けている」
→聖杯や必勝法はないということです。また常に勝てる方法や市場を見つけて変化し続けないといけないということ
「大衆と反対の事をするのが逆張り。大衆は常に間違うというのはすでに決まり文句。つまり大衆に向かう者こそが常に正しいのです。逆張りで成功するには正しいタイミングで適切な大きさのポジションを取る必要がある。小さすぎれば意味はないし、大きすぎればタイミングが少しはずれればふるい落とされる。勝つためには勇気と決断、そして自分の哲学をよく知る事が必要」
→彼のこの信念と精神力は常人離れしており、あのブラックマンデーの日、彼のPFは90%近くがロングポジションで、記録的大損害を出しているにも関わらず、投げ売りするどころか、買い増したそうです。
「トレードの利点は多くの決断とミスをさせてくれるところ。それを糧にして私は長年賢明な投資家でいられる」
「昔は長期の投資家がヒーローだったが、今日では賢い奴がヒーローです。人々は長期トレンドを予想する能力に確信が持てなくなって(株を買って寝かせとけば上がり続ける成長の時代ではなくなったから)短期指向となっている。かつて投資家だったあらゆる人々がいまやトレーダーです。」

→反省と柔軟な変化と絶え間ない成長が大事
「(素人へのアドバイスとして)この仕事の魅力は時には全くの愚かな者が成功することがあるということ。そしてこれが不幸の始まりで、専門家でなくてもうまくいくんだなという気分になる。これが罠。だから大事なアドバイスは、とても競争の激しい仕事だと認識すること。そして株を売ったり買ったりする時には、人生の大半を賭けて努力している連中と競争しているのだと認識すること。あらゆる瞬間に彼らプロがあなたの売買の反対側にいて、結局あなたは打ちめされるのです」
→意訳すると「おい、素人、ラッキーで勝ったからって勘違いするなよ。お前らの敵は人生の大半を投資に費やして全てを掛けてるプロだ。簡単に勝てると思うな(#゚Д゚)ゴルァ!! 」って事
※邪推ですけど、ニフティ・フィフティ相場とかでファンダが分からない素人が、絶対買っちゃいけないような割高株を成長性だけを根拠に買いまくって、理解不能なほど株価上がりまくったりで、ショート好きのこの人は度々担ぎ上げられてムカついてたので、こういう事いったのかなと(笑)
「良いトレードとは、自分のアイデアを追い続けていく信念と、間違いを認める柔軟性の間のバランスで成り立っている。何かを信じる必要があるけれども、同時に多くの間違いを犯す。確信と謙虚のバランスは幅広い経験とミスから学ぶのが一番。反対側で売買している人間にも見通しがあるはず。なぜ彼は売るのだろう。自分の知らない何を知っているのだろう。常にそう自問すること。そうすれば、あなたは自分自身にも他人にも正直になれるに違いない。」
→自分に理解出来ない上昇や下落でやられた場合は、自分と反対売買している人の気持ちになるのは大事ですよね。自分の理解の及ばない何か(情報・予想・経験等)を持っている圧倒的多数の人が自分の反対陣営にいるので、逆らわない事。静観・・・時には乗る事も大事。そうすればトランプラリーに乗り遅れなかったのに・・・
ただ、これと、自分を信じて逆張り(暴落で拾う、暴騰で売る)のバランスが難しい・・・

▼余談▼
マイケル・スタインハルトも鬱病に苦しんでいたと書いている記事がありました。
やはりファンダの投資家で自分に絶対の自信がある人は損切をしないので、多大な含み損を長期間抱える事があり、精神的に相当辛そうです。
割安、または成長株だと見抜いて買った株が下がり続ける・・・その含み損の中で、自分のファンダ能力を信じ抜く精神力は並大抵ではないと思います。
ファンダの人は、「苦労して見つけた絶対上がる株だ!間違ってるのは市場で自分が正しいんだ」という信念と、そう簡単に他の優秀なファンダの株を見つけられないという事情で、簡単に別の株に乗り換えたり出来ません。
その点短期投機家は楽です。
気に入らないポジションはさっさと切って次の上がる株(ファンダ・テクニカル不問。なんかよく分からないけどとにかく上がる株)に資金を向けるからです。
ただ、下手な人は損切ばかりで結局儲からないということも・・・
逆に含み損に耐えるファンダ投資家は、ナンピン等してポジションを増やしているので、持ち株が適正株価まで上がった時や成長が顕在化した時に、莫大な利益を手に入れます。

つまり、
短期投機家・・・精神的な苦痛から逃げて目先の利益を追いかける
長期投資家・・・精神的な苦痛を甘受して将来の爆益を追いかける
とも取れます。

尚、短期投機家は「上手い」事が前提であり、長期投資家は「正しい」事が前提です。
そしてどちらもそれが一番難しい・・・

どちらがいいかは、結果論(同じ期間でどれだけ多く儲けたか)でしか計れません。

↓マイケル・スタインハルトの登場する魔術師


↓マイケル・スタインハルトの自叙伝


↓マイケル・スタインハルトの著作物


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